高い専門性とチーム力を推進力に、革新の地域医療に挑む

Vol.22
JCHO仙台病院

仙台北部地域の医療需要が高まってきたことから、2021年5月、JCHO仙台病院は仙台市泉区紫山へ移転開院した。腎臓疾患や仙腸関節、血管外科治療など幅広い分野で高い評価をあげてきたJCHO仙台病院が、多様化する生活スタイルや幅広い医療ニーズに対応すべく、次々に新たな取り組みを進めている。仙台北部地域を代表する病院として、挑戦する試みと地域への思いとは?

「腎臓病のJCHO」、そして世界に先駆けた最新研究へ

JCHO仙台病院は、前身の仙台社会保険病院時代に、それまで画期的な治療がなかった慢性腎炎の治療法を確立。腎臓移植においても国内トップクラスの実績をあげており、「腎臓病なら仙台社会保険病院」と称され、数多くの患者を治療してきた。
さらに原因不明の腰痛として見過ごされてきた仙腸関節痛についても既成概念をくつがえす先進的な診断と治療法を確立した。この成果はアメリカやドイツなど海外の研究者からも注目され、「国際仙腸関節研究所」を開設し、国内外の研究者とともに研究を深めている。 「以前は『仙腸関節は動かない』とされていましたが、実際には関節にズレが生じて強烈な腰痛を引き起こしていたのですが、画像に映らないために原因不明の腰痛とされていました。正確な診断をするためには画像だけに頼らず、患者さんに触れて、痛みの部位を探すことが大事で、また病態理解にバイオメカニクスなど工学的視点も必要です。新しく研究所も設置しましたので、分野を超え、様々な研究者と研究を進めています」と話すのは村上栄一院長だ。

紫山地区にあるJCHO仙台病院は高速道路からも近く、利便性が高い。

地域の子育て層へさらなる安心と利便性を

高台にある広々とした場所に建つ新病院は、診療科は21科、病床数は384床。「腎センター」や「日本仙腸関節・腰痛センター」をはじめとする6つの医療研究センターがある。泉区や隣接する富谷市は若いファミリー世代も多く、移転に合わせて小児科を再開した。 「身近に総合病院の小児科があるというのは、小さなお子さんがいるご家族にとっては大きな安心感につながります。働きながら子育てされる方の利便性を考え、2022年7月より17時から19時までの夕方診療もスタートしています」と村上院長。以前から丁寧な診療に定評のあったJCHO仙台病院だが、常に利用者の生の声に耳を傾け、フレキシブルに改善につなげていく、そんな姿勢が新たな地域での信頼づくりにつながっている。

夕方診療に加え、紹介状がなくても受診できるメリットも。

一致団結でめざす「断らない救急受入」

次々に新しい取り組みを進めるJCHO仙台病院では、地域の拠点病院として救急搬送の受入体制の強化にも力を入れている。
「当院には脳の専門家がいませんので、救急搬送で多い脳梗塞や脳出血などは受入できませんが、それでも移転した2021年には約1,600件に対応できました。今年は2,000件を目標にしています」と村上院長。多数の診療科を抱え、研究センターの運営を円滑に進め、医療従事者の働き方改革も実現しなくてはならない。年間2,000件は高い目標だが、それを叶える自信はどこにあるのだろうか。 「課題はありますが、当院の先生方は専門に関わらず、様々な役割を兼務して病院の取り組みに積極的です。だから高い目標にも挑戦できるのです」と小畑孝志事務部長が話せば、村上院長も「うちは医師も事務方も垣根がない。お互いに協力し合って病院を盛り上げようという土壌が昔からありますね」と笑顔を見せる。

大きな試練を乗り越え、確信した病院の絆

その団結力は伝統的にあったというが、東日本大震災という大きな試練を乗り越え、さらに確固たるものに変わったという。
「壊滅的な被害を受けた沿岸部の病院に代わって、透析を必要とする患者さんをすべてうちで受け入れることにしました。透析器械を24時間フル稼働して、7日間でのべ1,759人の透析を敢行しました。医師・看護師はもちろん、事務方も『私たちの頑張りでしか患者さんを助けられない』という使命感で一致団結しましたね」と当時を振り返る村上院長。その後も地域のクリニックなどに透析施設を開放するなど地域医療の復興を牽引してきた。
そんな中、村上院長が病院の一体感を感じさせるエピソードを話してくれた。「日々増える患者さんの食事を用意するだけでも大変でしたが、寸暇を惜しんで診療を続ける医師や看護師や事務方が力を発揮できるようにと、栄養課のスタッフが休まず食事を提供し続けてくれました。仲間が頑張っているのだからと自分達も自然に動く。ロウソクの灯りで食事をいただきながら『これがうちの病院の良さだな』と感動したのを覚えています」。

地震発生時から復旧までを詳細にまとめた貴重な記録誌。

質の高い医療とチャレンジ精神が進化の源

「地域医療で一番大事なのは親切な対応」を合言葉に様々な取り組みを進めるJCHO仙台病院は地域の予防医学の分野も新しいアイデアを発揮している。
「健康管理センターは公益社団法人日本人間ドック学会人間ドック健診施設機能評価の認定施設に認定されており、新しい設備と丁寧な対応で気持ちよく受検いただける環境を整えています。オプション検査も豊富で好評ですが、特に好評だったのが地元情報誌『とみぃず!』で展開した、お得な料金で受けられる人間ドック健診キャンペーン企画でした」と村上院長。コロナ禍で健診を控える傾向が見られたことから、何とか健康診断への関心を高めようと割引企画を設けた。
地域の安心と高度医療の関係はまさに撚り合う糸に似ている。長年磨きをかけてきた先進医療と研究と病院が一丸となって実現する丁寧な対応が地域の安心を生み出す。新しいニーズに応える柔軟なアイデアと実行力を備えたJCHO仙台病院が今後、どんな強固な絆を創り上げるのか期待は大きい。

「地域に安心を与える灯台のような存在を目指し、心に寄り添う医療に尽力します」と語る村上院長。

JCHO仙台病院
住所:宮城県仙台市泉区紫山2-1-1
TEL:022-378-9111

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