SDGs/ICTの技術集積を通して、建設業の新しい未来を築く。

vol.32
伸和興業株式会社

新型コロナウイルス感染症の流行やウクライナ危機など、世界情勢が不安定になる中で、日本経済を牽引していく業界として期待が集まる建設業界。しかし一方では、長時間労働や人材不足といった問題も指摘されており、環境の改善が求められている。
建設業の課題解決に向けて、今後どのようなことが求められていくのか。県内の土木工事を手掛けている「伸和興業株式会社」の笠原亨代表取締役に、話を伺った。

ICT技術を導入することで、社員が働きやすい労働環境を整える

インフラ整備や都市開発など、私たちの暮らしの基幹部分を支えている建設業。かつては「3K(きつい・危険・汚い)」と揶揄され、その過酷な労働環境から人材不足や労働人口の高齢化といった多くの課題に悩まされていた。
「当時の建設業界は休みもほとんどなく、毎日のように残業もありました。大変な時期には、現場事務所に泊まり込んで作業を行うこともありましたね」。官公庁からの依頼を受け、道路・下水の整備や河川工事といった公共事業を幅広く手掛けている「伸和興業株式会社」の笠原亨代表取締役は、かつての労働環境を思い返し、あの頃は本当に大変だったと苦笑する。昔は定時で上がれる日はほとんどなく、残業が常態化。肉体を酷使するハードな日々に、体調を崩してしまう人もいたという。

しかし近年、建設業界の労働環境を見直そうと、各所でさまざま動きが見られている。その一つが、デジタル技術やITツールの導入による業務の効率化だ。
「例えば伸和興業では、従来の地上測量からセンサーやカメラを搭載したドローン測量へと移行しました。ドローンを活用することで、短時間で広範囲の測量を行うことができるのです。さらにその測量データを元に3Dモデルで設計を行い、建設機械に情報を入力することで、機械が自動で施工を行います」。
各工程で得られる電子情報をやりとりして施工を行う「ICT施工」を工事現場に取り入れたことで、大幅なコストカットや時間のロスを削減することに成功。業務の効率化が進み、従業員の業務負荷も軽減されてきている。加えて、高効率・高精度な施工が実現したと言い、「一昔前まで施工は“職人技”が求められ、オペレーターの技量によって仕上がりが左右されていました。ですがICT施工を導入したことで作業時間の短縮化はもちろん、どのオペレーターが担当しても精度の高い仕上がりが実現したのです」。

勤怠管理にもICTを導入。現場事務所内にカメラを設置し、特定の人に業務が偏らないよう本社で確認・管理している。

かつて自分たちが苦労したからこそ、社員には働きやすい環境を提供し、きちんとワークライフバランスをとってほしいと考えている笠原代表。「残業は極力行わない」というのが会社の方針だ。書類の電子化やリモート会議の導入なども進められており、ICTを業務に上手く取り入れたことで、今では本社・現場の社員ともに、毎日ほぼ全員の定時退社が実現していると微笑む。
「社員の皆さんが『この会社にいてよかった』と思える労働環境づくりを目指しています」。社員の働きやすさを追求したこの取り組みは日本健康会議から認められ、2022年には「健康経営有料法人2022(中小規模法人部門)」にも認定された。

ICTの活用により、“現場は泥だらけ”というイメージは過去のものとなりつつあると、笠原代表は感慨深く語る。

今後の課題は、繁忙期の残業をどのように減らしていくか。
「スケジュールの都合上、工事の完成のほとんどが年末に集中してしまい、竣工間際は残業が発生してしまう場合があります。社員の皆さんが快適に働ける環境を整えるため、引き続き働き方改革を行っていきたいと考えています」。
ICT技術を活用することでさらなる労働環境の改善を進めていきたいと、意気込みを話してくれた。


未来の暮らしを守るために、SDGsに挑戦する

「多くの都市開発に従事してきて思うことは、自然環境にやさしい持続可能なまちづくりの大切さです」。
工事現場での植物保護や、撤去した道路の舗装材をリサイクル工場へ持っていくなど、伸和興業では人と自然環境にやさしいまちづくりを目指し、建設業としてできることからSDGsに取り組んでいる。
土地を切り拓き、新たな建物や道路を作り上げる建設業は、SDGsとは対極に位置しているように思える。しかし、さまざまな土地開発を請け負う建設業だからこそ、社会全体の財産を守るため環境への負荷を少しでも減らそうとする「SDGsの意識」を持つことが大切なのだと、笠原代表は訴える。
「人・まち・自然の調和が取れることで、人は心豊かな生活を送ることができるのです。私たちは建設業に携わる一事業者として、人と自然、双方に配慮したいと考えています」。

社屋の屋根にソーラーパネルを設置し、発電した電気は社内設備や社用車である電気自動車の動力として利用するなど、エネルギーの自給自足を行う「創エネ」も実施。使いきれなかった電気は電力会社に買い取ってもらい、災害時に使用する食料や水などの購入に充てている。
「東日本大震災や台風19号による豪雨被害で、私たち自身も被災しました。その経験を生かしながら、有事の際には近隣住民の皆さんへ非常食などを提供できるよう、できる限り防災対策を行いたいと考えています」。


お客様から“選ばれる建設業”を目指す

近年、異常気象の影響による豪雨や大きな地震といった自然災害が目立っており、建設業の力を求める声は高まってきている。
国土交通省から名取川の維持・メンテナンス業務を請け負っている伸和興業も、「豪雨による河川の水位上昇」や「震度4以上の地震発生」といった有事の際には社員が出動し、名取川の水位の警戒にあたっている。
「あまり知られていませんが、建設業は警察・消防のように地域の人々の暮らしを守るという、使命感と誇りを持てる仕事です」。
胸を張り、建設業の魅力を教えてくれた笠原代表。今後もまちを支える縁の下の力持ちとして、地域の安全・安心な暮らしを守っていきたいと熱い思いを語ってくれた。

将来、日本の景気を支えていく産業として期待されている建設業は、この先、業界内の競争が激化していくことが予測されている。
「伸和興業ではこれからも社員と共に力を合わせ、ICT化などをはじめとした現場改革を推進することで若手人材の確保を目指し、また、社会貢献活動などを通して、お客様から選ばれる建設会社となるよう努めます」。
建設業の未来を見据え、多様な取り組みを推し進めていく伸和興業のこれからに期待したい。

伸和興業株式会社
住所:宮城県仙台市太白区大野田5-5-2
TEL:022-797-5848

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