「最高のホームをつくろう」。あいホームの“人に尽くす家づくり”とは?

Vol.59 株式会社あいホーム

物価高騰が止まらない今、家を建てることのハードルは年々高くなっている。そんな中、宮城県富谷市に本社を置く工務店「あいホーム」は、2021年から3期連続で売り上げを伸長させ、2024年上半期に関しては、前年度120%の受注増を実現している。
2020年に社長に就任した伊藤謙社長は、一体どんな辣腕を奮ったのか?
答えは実にシンプルだった。
「社内の人間関係を良くすること。これが一番でした」
結論はシンプルでも、そこに至る過程は実に複雑。そこにあいホームという会社の面白みが詰まっている。伊藤社長に、自らの失敗も含め、家づくりにかける想いについて赤裸々に語っていただいた。

トップスピードで先頭を走り続ける。そんな伊藤社長の失敗とは

伊藤社長があいホームの社長に就任した2020年、世は新型コロナの脅威に晒されていた。人々は新しい働き方を余儀なくされ、社会全体に困惑ムードが漂う中、DXの可能性に一際早く注目していたあいホームは次々とオンラインツールを導入し、時代の急流を見事に乗りこなす。
「社内のデジタル化をはじめたのは、東日本大震災のすぐ後からでした」
伊藤社長はそう語る。
現在、年間200棟ほどの住宅を建てるあいホームだが、震災当時の施行能力は今の半分ほどだったそう。
「震災でたくさんの方が家を失われて、今までの3倍近くの受注を受けました。一刻も早く家を用意してあげたい。けれど現場監督は急には増やせないし、職人さんも引っ張りだこ。難しい、本当にどうしようって」
そんな時にふと気になったのが、施工管理表だった。
「大工さんの予定を見た時に、家を経てた後に次の現場に入るまで、施工管理の段取り不足で期間が空いていることがあった。当時は施工管理表を手書きしていたので、まずは着工管理をデータ上で見える化しました」
施工管理表のデジタル化によりあいホームの施工能力は格段に向上し、2012年にはそれまでの倍の受注に対応できる体制が整った。
「アナログだったものをデータ化して、1年で倍の施工管理体制を実現できた。デジタル化ってすごいなと思いました」

富谷市のあいホーム展示場。来店者の要望に合わせ、さまざまなタイプの住宅を見学できる。

DXの可能性を感じたエピソードは、もう一つある。
「地震が起きた時は徳島県にいたんですが、誰とも電話が通じない中、なぜかインターネットにはアクセスできた。電話がなくとも情報のやり取りができることのすごさをひしひしと感じました」
身をもってインターネットの力を知った伊藤社長は、社内のDX化に邁進する。2017年には当時の社長(現会長)を説得し、社員一人ひとりにiPhoneを支給した。コロナ禍で注目を集めたZoomもこの時から活用しはじめるなど、積極的にデジタルツールを導入した。
「早くからデジタル化を進めていたので、コロナ禍になり直接会って話ができなくなってもオンラインツールがあれば大丈夫じゃん!と思い、DXをさらに加速させました」
新卒者のSNS採用、人事評価のスコアリングシステム、オンラインイベント…。新しいテクノロジーを用いた社内改革は大成功を収めたように思われていた2022年の冬。伊藤社長は、自らの“失敗”に気付かされたという。
「若手社員が突然3か月連続で退社したんです。チャットやオンラインでのコミュニケーションを推奨するあまり、相談や本音を言うことができない空気を作ってしまっていたんだなと…このままじゃいけないと考えを改めました」

社員にもお客さんにも寄り添う企業、あいホーム

危険信号を察知した伊藤社長は、直接的なコミュニケーションを取る方向に舵を切った。オンライン会議を取りやめ、社長自ら社員一人ひとりと直接話す時間を定期的に設け、明るく改装した倉庫で会社全体でカレーを作る「カレーの会」を開催した。
「会社はあなたを必要としている」
それを伝えるために、伊藤社長は粘り強く社員と向き合い続けた。すると、ぎこちなかった社内の空気は徐々に和らぎはじめ、社内には以前の活気と風通しの良さが戻ってきた。
嬉しい誤算もあった。社内コミュニケーション活性化の結果、これまで以上に若手がのびのびと仕事ができる環境が醸成されたのだ。
「人間関係が円滑になると、上司への相談やトラブルへの報告も楽になる。だから若手が伸び伸びと働けるようになりました。雰囲気の良さはお客さまにも伝わるようで、好感を持っていただく割合も増えて。上半期の受注120%超えは、人間関係が良くなって、社員みんなが心理的安全性を感じながら仕事をできるようになったことが大きな要因だと考えています」
企業成長を実現するのは難しい。成長し続けることはもっと難しい。その困難を成し遂げた一番の要因が効率化やデータ分析などの“デジタル”なものではなく、人間関係の向上という“アナログ”なものだったというのは興味深い。
誰もがインターネットで情報を簡単に見ることができ、住宅メーカーがお客さまに選ばれることのハードルが年々上がっている時代。だからこそ、成果を上げるためにメーカーはさまざまな工夫を凝らして顧客を獲得しようとする。しかし、驚くべきことにあいホームの営業手法はまるで真逆だ。
「あいホームは、お客さまが求めていることだけを行う“反響型営業”を行っています。何もしないということではなく、時間をかけ丁寧なヒアリングをして、お客さまの意図に沿ったご提案だけをします。無理な営業は一切しません」
あいホームが掲げる「人に尽くす家づくり」というミッションにもその姿勢は反映されている。
「お客さまの抱えるお悩みを一緒に解決する。あいホームでの体験を“売り込まれた”ではなく、“寄り添ってもらえた”と感じていただきたい。それが人に尽くすということだと考えています」
多くの人にとって、家は一生に一度の特別な買い物だ。だからこそ悩み、迷い、緊張する。あいホームはとにかく時間をかけてお客さま一人ひとりとコミュニケーションを積み上げ、寄り添い、要望を細かに汲み取ってくれる。その過程は、伊藤社長が全社員と丁寧に話をする姿勢と重なった。

カレーの会の様子。倉庫とは思えないほどのひらけた空間で開催され、時には有志のバンド演奏やダンスが行われることも。

「最高のホームをつくろう」というスローガンを掲げ、暮らしに寄り添う家づくりを

 2023年、あいホームは「最高のホームをつくろう」というブランドスローガンを発表した。アットホーム、ホームタウン、そしてマイホーム。「ホーム」という言葉に「家」以上の意味が含まれているように、あいホームがつくるのは単なる「家」ではない。
「僕たちは家ではなく、暮らしを提供したいんです」
例えば、猫が好きな人が住む方ならどんな家がいいだろう? サウナを自宅に設置したい人は? お客さまが大切にしているものに興味を持つと、求める暮らしが自然と見えてくる。それに合わせた提案をする。それが「暮らしを売る」ということだ。
その理想の第一弾が、宮城県石巻市に実現した。
石巻マリンヴィレッジ。コンセプトは、釣りとサーフィン。
海のそばに建てられた6棟の家には、サーフボードや釣り竿が悠々と置けるスペースがあり、玄関のすぐそばにシャワーが設置されるなど、海が好きな人々の生活に適したデザインがなされている。何より大きな特徴は、共用のスペースに作られたウッドデッキやガーデンデスク。釣った魚を捌いて火を炊けば、あっという間にパーティができる。
石巻の海を大切にし、「釣り」「サーフィン」といった共通の趣味を持つ人々とライフスタイルを共創する。そんなコンセプトで作られた石巻マリンヴィレッジは、発売日に購入者が決定した。
提案される新しい「暮らし」を通じて、私たちはいま一度自分が何を大切にしたいのかをじっくり見つめ直す機会を得られる。それができるのも、あいホームが焦らずに時間をかけて寄り添ってくれるからだ。
「実は、現場の反対を押し切って徹底的に性能を追求したこともあったんです。でも全然売り上げにつながらなかった。あちゃー、やっちゃったなーと思いました。でも、その失敗が、お客さまは住宅の性能ではなく暮らしを求めているのだと教えてくれました」
伊藤社長はおおらかに笑った。
失敗は成功の元。失敗を恐れない伊藤社長は、これからも全力で先頭を走り続けるに違いない。スピードが有り余りすぎて、時には転ぶかもしれない。けれどあいホームの社員は、そんな伊藤社長のことを笑いながら引っ張り起こしてくれるだろう。そうやってまた、「最高のホームをつくろう」というスローガンに向けて、みんなで一緒に走っていく。それがきっと、人を何より大切にするあいホームのあり方なのだ。

石巻マリンヴィレッジには、あいホームが考える「新しい暮らし」がたっぷり詰まっている。

株式会社あいホーム
〒981-3329
宮城県富谷市大清水1丁目31番地6
TEL.022-348-8151
https://aihome.biz

関連記事一覧