医療を支える〜すべては患者さんのために〜、地域の医療を絶対に止めないという信念のもとに
Vol.55 東北医療機器協会
一般社団法人 日本医療機器販売業協会(医器販協)の傘下で活動を行っている東北医療機器協会。今後どのようなミッションを担っていこうとしているのか、東北医療機器協会の柴田清孝会長と事務局の小室幸子さんに取材を試みた。
東北医療機器協会とは?
まず、東北医療機器協会の成り立ちを見てみよう。
前身は、医療機器販売業の同業組合からなる「東北ブロック協議会」。平成7年4月に、「東北医療機器協会」と名称を改めて、一般社団法人 日本医療機器販売業協会の傘下のもと発足している。その際、各県同業組合を各県支部としたが、その各県支部は平成20年4月に「各県医療機器販売業協会」と名称改めて、現在の体制となっている。
東北医療機器協会柴田清孝会長は話す。
「東北医療機器協会のミッションは、東北ブロック6県の各県医療機器販売業協会との連絡、調整、提案、協力を遂行することです。各県の医療機器販売業協会と一体となって東北全体の医療機器の安定供給に力を注いでいます」。
現在、正会員は110社、準会員は20社、計130社。理事会は年2~3回開催され、医器販協から発信される情報の伝達を行うとともに、医器販協への提言を協議している。
医療の現場と医療機器メーカーをつなぐこと
「医療機器って、どんなものを指すか分かりますか?」と尋ねる柴田会長。
確かに、改めて「医療機器とは?」と聞かれると、分かるようで分からない。「医療機器にはシリンジ、テープ類といった一般消耗品からペースメーカーやステント、画像診断機器(エコー、CT、MRI等)など多種多様なものがあり、その種類は約85万種類と言われています」。すごい数のアイテムだ。「我々の仕事は、お客様のニーズを最大化して、数十万アイテムの中から取捨選択しながら最適なものを提供していくというものです」。
柴田会長は、医療機器販売業は、まさに医療の現場と医療機器メーカーをつなぐパイプ役のような役割と言う。「我々医療機器販売業は、メーカーが作った医療機器を医療機関に届けると同時に医療機器に関する新しい情報を医療機関に知らせるという役割を担っています。医療機器の安定供給が我々の大きな仕事です。ただそれだけではなく、医療機関からの要望を引き出しメーカーに伝えるということも行っています。医療現場と医療機器メーカーとの間を双方向につなぐ情報の流通も担っているのです」。
さらに、メーカーが作ったコンセプトにあわせて使ってもらうという「適正使用支援」を行っているが、とても重要な業務だ。医療従事者が適切な医療機器を選択し患者さんの治療や診断を適正に行えるように、適正な医療機器を提案し、機器の貸し出しから手技中の立会い、術後の引き上げなど総合的な適正使用支援を行っていると言う。「発注からアフターサービスまで医療機器に関するすべての仕事を請け負っています。機器の自主回収も我々の仕事です」と話す柴田会長。
これらの業務を通して、医療機関のチーム医療を支える「拡大チーム医療」の一員として医療機関の幅広いニーズに応え、また医療制度を支えるインフラとしての役割を果たしている。
医療を止めない、流通を止めない。医療インフラとしての使命
柴田会長が代表を務める株式会社シバタインテックでは、東日本大震災の際、流通が止まった東北地区において、「なんとしても地域医療を止めない」という思いを胸に、危険を顧みず新潟まで医療機器を引き取りに行き、被災地の医療機関に供給してきたと言う。
「東日本大震災を経験して医療機器や医療材料の流通というものは、国民生活の重要なインフラであることを再認識された方も多いのではないでしょうか。医療におけるBCPを担うのが我々のミッションです」と話す柴田会長。BCPとは事業継続計画(Business Continuity Plan)の頭文字を取ったもので、企業が、テロや災害、システム障害や不祥事といった危機的状況下に置かれた場合でも、重要な業務が継続できる方策を用意し、生き延びることができるようにしておくための戦略を記述した計画だ。「流通が回っていなければ医療が止まってしまう」という強い使命感とともに、医療に貢献したいという思いが伝わってくる。
東北医療機器協会事務局の小室幸子さんは話す。
「災害時にも医療機器の供給を止めないための取り組みをしています。各県協会で現在、東北6県での災害時の相互協力体制の協定を結んでいることもそのひとつです」。
全国組織である日本医療機器販売業協会では、災害時に県からの要請に基づき、医療機器等を加盟各社における流通在庫からの調達により、災害医療ニーズに対応し迅速に医療機器等を供給するというミッションを掲げている。実際に、東日本大震災において日本医療機器販売業協会大震災対策プロジェクトを立ち上げ緊急配送体制を整備し被災地へ医療機器の緊急配送を行なった。
2012年09月には「大災害時の対応マニュアル」を策定し、協会はもとより、各ブロックと都道府県協会及び会員各社の協力によって、必要な時に、必要な物を、必要としている人たちに対する安定供給を目指している。
「それを受けて、我々都道府県協会では各自治体との間において「災害対策協定」の締結を行い災害発生時の取り決めをしています。災害備蓄医療機器等については、自治体から災害発生時に要請があった場合に自治体及び災害拠点病院等との間における配送ルート・納品方法等供給体制を本マニュアルに沿って策定しています」と話す小室さん。
柴田会長も話す。「協定の中で困っている地域を支えていこうと考えています。我々医療機器販売業は、いつ・いかなる時も医療機器・医療材料を安定して医療機関に届けるという社会的使命のもとに活動を行なっています」。
東日本大震災の際、自らが被災者であるにもかかわらず、任務遂行のために奔走したスタッフもいたという。まさに医療インフラとしての重要なミッションを担っていることがわかる。2013年03月、日本医療機器販売業協会は東日本大震災における被災者の支援活動等に対して厚生労働大臣感謝状を授与されている。
医療機関と深く繋がり、包括的かつ継続的に在宅医療・介護を支援
2025年は、団塊の世代が75歳を迎え後期高齢者となり、本格的な超高齢化社会を迎える。いわゆる2025年問題だ。日本の総人口は減少するなか、後期高齢者の割合が増加していくため、今後も医療や介護の需要は増え続ける。リソースは逼迫し、十分なサービスが提供できなくなる恐れがある。そこで動き出すのが、地域の力を活用した医療・介護サービスの拡充を目指す地域包括ケアシステムだ。このシステムの推進においても医療機器販売業が担う使命は大きいと柴田会長は話す。
「医療機器販売業は、医師、看護師、ケアマネジャー等の多職種との連携による支援体制の構築が必要になります。高齢化が進む日本で、私たち医療機器販売業が担う役割は増加し、また多様化しつつあります」。
在宅医療に関わる医療機器販売業者は、退院前から患者さんやご家族と顔を合わせ、患者さんの自宅での療養を支えるため医師の指示のもとサポートを行う。また退院後には、定期訪問など患者の生活に合わせた適切な支援の提供を行うなど、地域の関係機関と連携し包括的かつ継続的な在宅医療・介護の提供を目指すべく、積極的に患者支援業務に取り組んでいく。医師従事者に集中できる環境を作っていくためにも、医療機器販売業者が現場に積極的に入り込んでいくことが必要になるし、営業担当の編成もエリアをカバーできるように配置していくことが必要になる。
「大きな災害になると県単位での被害になります。そうすると県全体・エリア全体に医療機器を供給できる仕組みが必要になります。その意味でも県単位・東北エリア単位の協会は必要になります。これからは医療機器販売業はエリア全体を担えるかどうかということが大切なポイントになっていくと思います」。
さらに、柴田会長はこれからの医療機器販売業に必要なもののひとつとして人材をあげる。
「少子高齢化が進む社会において、医療に関わる人材の安定的な維持はとても大切なことです。我々の業界も人材が足りないと、医療供給に大きな問題が発生してしまいます。2025年から在宅ケアが進めば、訪問介護に関わる人材がますます必要になると考えます」と話すように、地域包括ケアシステムを担える人材が必要になると考える。「医療機器販売業の必要性とやりがいを若い人たちに知ってもらい、やってみようという人を増やしていきたいです。その意味でも協会の活動は必要です」と柴田会長は話す。
「地域医療への貢献と医療をとめないという使命のもとに、地域社会に向けて我々ができることを常に考え、質の高いサービス・サポート体制の実現に向かって、会員企業一丸となってチャレンジし、全力で取り組んでまいります」。
この地域の医療において「誰一人医療から取り残さない」を胸に地域医療の拡充のため、東北医療機器協会は、地道な活動を進めていく。
東北医療機器販売協会
https://tohoku-ikihan.com/
住所:仙台市青葉区山手町8-10
TEL:022-303-5650