日本にハワイを。コナズ珈琲の非効率なおもてなし

vol.61
株式会社 KONA’S コナズ珈琲 利府店

2024年の6月末に全国で大人気を博すカフェチェーンが東北に初出店を果たした。
「コナズ珈琲(Kona‘s Coffee)」。その利府店がオープンし、大反響を呼んでいる。
コナズ珈琲は「いちばん近いハワイ」をコンセプトとして掲げるハワイアンカフェで、料理と空間でゆったりとした食事体験を提供しており、オープン後は100組以上、待ち時間は3時間以上の大行列を作った。
今回は、そんなコナズ珈琲の本部長である浅野 源氏にお話を伺った。

利府に誕生。海を超えずに楽しむハワイ

コナズ珈琲 本部長の浅野源氏。手前にあるのがコナ100%コーヒーだ。

店舗ごとに異なるハワイアンな小物たち。

コナズ珈琲の始まりは、親会社であるトリドールホールディングスの粟田社長が、丸亀製麺をハワイに出店する際に現地のカフェを目にしたことがきっかけだという。
ハワイ感のある空間、フレンドリーな接客を日本に持ち込みたい。そういった想いからコナズ珈琲は出来上がった。
ハワイの世界観を再現するため、コナズ珈琲では内観のみならず外観からこだわり抜いている。店舗周りにはヤシの木が植栽されており、南国の雰囲気がワクワク感とともに来店客を出迎える。
南部屋敷 利府店、そして街のシンボル的存在だった赤い水車は、地域の方々が南部屋敷での記憶を思い出すきっかけとして、そして地域の方々と南部屋敷へのリスペクトとして残すことが決まったそうだ。
実際、水車は話題になり、メディアでは必ずと言っていいほど触れられるらしい。

店内にもヤシの木が植栽されており、飾られたハワイアン雑貨やサーフボードと共にハワイアンの空気を演出している。
椅子やテーブルなどのインテリアにもこだわりがあり、ソファに関してはコナズ珈琲オリジナルの生地を使用。世界に一脚だけのものもある。
中には小上がり席もあり、テーブルごと、席ごとに違う座り心地や景色が楽しめる。
「今日はこの席だったけれど、次はあの席で食べてみたい」という次回の来店につながるワクワク感や楽しさを提供する空間設計だ。
なお、全国すべての店舗が違う造りになっており、お客さんの中には「コナズ巡り」を行っている人もいるのだとか。

コナズ珈琲が東北初の出店先として利府町を選んだ理由として、東北一の都市である仙台から近いということが、いちばん大きな理由だと挙げられた。しかし、それと同時に気候にも強いこだわりがあったという。
「ハワイの演出を大切にしていく中で、あまり雪が降ってしまう地域だと植栽が死んでしまうんです。利府であれば、寒さに強い種を時期を選んで植えれば根付くだろうという判断で出店が決まりました」と浅野氏は経緯を語った。
このワクワクするような世界観は利府だからこそ実現できたということだ。

出店に関して地域の人々の反応は好意的なものが多かったという。
出店の際に出した求人情報を誰かがSNSに載せたことがきっかけで、それが拡散。
オープン以前から地域の方には非常に助けられたようで、「工事をしている最中に顔を出してくれるお客様もいて、お店のことを話すと『もう知ってるよ』や『絶対来るね』などと声をおかけいただけたりして、非常に温かい地域だなと感じていました」と当時のことをしみじみと振り返っていた。
「友達に紹介したい」と、様々な相手と繰り返し利用する方や1時間や2時間の待ち時間でも利用してくれる方もいるらしく非常にありがたいという。
また老若男女全ての世代をターゲットに店舗展開をしているコナズ珈琲では、それぞれの世代から利用されることはあっても3世代揃っての利用は多くない。そんな中、3世代、家族みんなで来ていただけるのは利府店の客層の特徴であるとのことだった。

浅野氏は利府店の将来について、「地域に必要とされる場所、ある種のインフラのような存在になっていきたい」と述べた。
外食産業は入れ替わりが激しい業界だ。長い間地域に愛される店もあれば、すぐに閉店してしまう店もある。そんな中で地域の方に繰り返し利用していただいたり、3世代で利用していただいたりと支持を常に集めるためには、サービスに磨きをかけていかなければならない。
そして東北という地方で展開していき、「いちばん近いハワイ」を様々な人に届けていきたいと表明してくれた。

日本向けハワイアン。コナズの作るこだわりメニュー。

ホットコーヒーをドリップ中。甘く豊かな香りが周りに漂う。

入店後、まず目に入るのはコーヒー豆と焙煎機のディスプレイ。見て楽しい、まるで科学館のようなビジュアル。

コナズ珈琲の売りはやはりコーヒーだ。
世界三大コーヒーの一つであるコナをはじめ、他の豆と合わせたブレンドコーヒー、ローストが深めで苦味を楽しめるものや反対に浅く酸味が強いものも提供している。
さらに淹れ方も、美味しい部分を抽出する「ハンドドリップ」とコーヒーオイルまでもを抽出する「フレンチプレス」から選ぶことができ、同じ種類でも異なる味わいを楽しむことができる。
コナは昨今非常に高騰しており、ブレンドをせず100%でこの価格で提供しているのは日本全国、コナズ珈琲以外にないのではないかと力説していた。
実際に飲んでみると、強い酸味を楽しめる上に後味がすっきりとしていて非常に飲みやすい。
なお、豆は全て店内で焙煎されており、店頭に配置された焙煎機が豆の香りを店全体に送り込んでいる。
浅野氏によると焙煎機の動きは小さな子どもの関心の的になるなどして、大人も子どもも楽しめる空間作りに貢献しているとのことで、「そういう意味でも、焙煎が済んだ豆を仕入れるのではなく、各店で豆から焙煎をして挽きたてのコーヒーを楽しんでいただくという点に関してはかなりこだわっています」と笑っていた。

高々と生クリームを盛る様はまさに職人技。

従業員の方はみんな笑顔。髪型や服装が自由なこともありのびのび働くことができる。

もちろんコナズ珈琲では食事にも力を入れている。
パンケーキでは高さ約18cmの生クリームが聳え立つ「ストロベリー&バナナホイップパンケーキ」がNo. 1人気。
ボリューム満点でインパクトのある見た目だが、浅野氏によると女性でも人によってはペロリと食べられてしまうらしい。数人で来て数種類のパンケーキをシェアするお客さんもいるとのことで、友達、家族で楽しめる食事となっている。
ベーコンエッグやサラダなどの料理と共に食事として楽しむミールパンケーキの中では、自家製のタレに漬け込んだグリルチキンと食べるものや、もち粉で揚げたチキンとハニーマスタードが絡んだ甘塩っぱいパンケーキも人気だ。
パンケーキと料理を一緒に食べるという文化はハワイにも存在するが、これらのメニューは全てコナズ珈琲がオリジナルで制作しているとのこと。
使用されるパンケーキミックスは塩が入っており、香りも強い。そのため甘いものにも塩っぱいものにも合うこだわり抜かれた生地になっている。

ちなみに、味付けは本場の空気感を感じながらも日本人の舌に合うように開発されており、試食は浅野氏や社長が直々に行うらしい。
多い時には試作10回ほど繰り返し、一つ一つのメニューをこだわりをもって開発しているそうだ。

ストロベリー&バナナホイップパンケーキ。卓上のコーヒー豆とメープルシロップはかけ放題。フルーツと合わせて味変しながら召し上がれ。

非効率。だからいい体験になる。

通称”コナズグリーン”が用いられたメニュー表。みんな魅力的、どれを頼むか悩んでしまう。

「コナズ珈琲は『非効率』にこだわっているんです」と浅野氏は語る。
例えば、社内で開発されたコナズグリーンという緑色が存在し、壁画やメニュー表などさまざまな部分で使用され、大きな役割を担っている。
POPなども、自社のデザイナーが制作したものを利用することにより、コナズ珈琲のもつ独自のハワイアンな雰囲気を作り出している。
メニュー表には更なるこだわりも存在し、料理の中には写真ではなくイラストとして描かれたものも見受けられる。
イラストとして落とし込まれることによって角が取れ温かみが表現されている。コナズ珈琲はメニューを見るだけでも面白い。

また、コナズ珈琲は利用客に対して時間制限を設けていない。
そのため非常に長い時間利用する人もおり、回転率が重要な飲食店としては非常に効率が悪く感じる。
「僕らも椅子とテーブルを見直せば1.5倍ぐらいお客様が入れることはわかってるんですよ。ただ、それをしてしまうと僕らが提供したい価値とはまた変わってきてしまうんです」
コナズ珈琲の掲げる「いちばん近いハワイ」とは、空間や料理だけの話ではない。そこに流れる時間さえも、「ハワイ」でなくてはならない。
「お客様にはゆっくりと心ゆくまで僕らが作った空間を楽しんでもらいたいんです」
浅野氏は語る。
そのために時間制を廃し、ゆったりとくつろげる席を用意する。
大きな音の出る呼び出しボタンは使わず、呼ばれる前に気づいて接客を行う。
お客さんを第一にした、効率を考えないサービスがコナズ珈琲が提供する「ハワイ」だ。
と、言ってもまったく効率化を行なっていないわけではない。
厨房の中の動線や、想定されるオペレーションの中でどこに洗い物を下げればいいのかなど、お客様に見せられない生産の部分のオペレーションにはとことんこだわっているのだという。
「食事の提供スピードはお客さんに対して提供する価値の一つだと思うんです」と浅野氏。
お待ちいただいたお客様に快適な食事体験をしていただく。そのための効率化がそこにはある。

コナズ珈琲では絶対に譲れない三原則がある。
それは「人」「商品」「空間」。
特に「空間」についてはもはや言うまでもないだろう。
店舗を増やすにも、利府店のように立地や風土について吟味しなければハワイの世界は作れない。
満足のいくサービスを提供するためにも、それらへの深掘りは必要不可欠だ。
「一つ一つのお店を『確実に喜んでいただけるようにするにはどうすればいいのか』を考えながら、オープニングのスタッフのトレーニングや商品開発、お店づくりというのを非効率ながらやっています。それがやっぱりコナズ珈琲の価値だと思うので」

非効率だからこそ、楽しい。
非効率だからこそ、美味しい。
非効率だからこそ、また来たい。
効率を度外視したお客様第一のサービス。
回転率を考えない逆張りの体験設計が行列の理由だ。
コナズ珈琲は地域に愛されるスポットを目指し、これからも非効率に「いちばん近いハワイ」を提供し続ける。

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