ずっと暮らせる故郷を目指して。石巻圏域の未来を描くSDGs推進宣言。

Vol.13
石巻市 復興企画部SDGs移住定住推進課

ここ数年で、経済、社会、環境などあらゆる場面において欠かせない理念となったSDGs(持続可能な開発目標)。これは、人類がこの地球で暮らし続けていくために、2030年までに達成すべき目標として2015年に国連サミットで採択された17の項目を指す。全国の自治体でさまざまな取り組みがスタートする中、石巻圏域(宮城県石巻市を中心とする都市圏)では、2市1町(石巻市、東松島市、女川町)が連携・協力してSDGsを推進していくことが発表された。「圏域」という大きなスケールで取り組むことによって、それぞれの自治体に暮らす住民、そして未来を担う子どもたちにどのようなメリットがあるのだろうか。石巻市の復興企画部SDGs移住定住推進課に話を伺った。

令和3年度石巻市SDGsシンポジウム(オンライン配信)

2市1町の首長が「SDGs推進宣言」を発表

2022年2月27日に石巻市複合文化施設(マルホンまきあーとテラス)で行われた「石巻市SDGsシンポジウム」で、石巻市、東松島市、女川町の首長がそろってSDGsの推進を宣言した。SDGsの理念に基づき、人口減少・少子高齢化などの地域課題に対し、2市1町が連携・協力して解決を図っていく意向を示した形だ。その後、シンポジウムでは「石巻圏域のSDGs連携で創る未来」をテーマに首長対談が行われ、オンライン配信での開催にも関わらず多くのメディアの注目を集めた。

宣言後、3首長がそれぞれ宣言書に署名した。

「石巻市、東松島市、女川町は地域的にも不可分な側面があり、地域課題が共通しています。例えば人口減少、少子高齢化の課題などです。これまでも、課題に対し自治体ごとに取り組みを行ってきました。今回の宣言を経て2市1町が連携することにより、取り組みの認知度向上などでスケールメリットが生まれると考えます」

そう語るのは、石巻市 復興企画部SDGs移住定住推進課 課長の石川さんだ。移住・定住促進の取り組みに長年携わり、現在は課長補佐の阿部さんとともに、石巻市のSDGs推進を先導する立場にある。3首長による宣言が行われたことでまったく新しい取り組みをスタートさせるというわけではなく、数多くある既存の事業とSDGsのゴールをしっかりと紐付け、圏域として広く普及啓発に乗り出そうという方針だ。

東松島市、石巻市がSDGs未来都市に選定

2市1町の中でいち早くSDGsの取り組みに力を入れていたのは東松島市。2018年に「SDGs未来都市」の選定を受けて以降、SDGs未来都市計画の策定と推進に取り組んできた。それに続いて2020年には石巻市が「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」に選定を受けている。「SDGs未来都市」とは、内閣府が2018年度よりSDGsの達成に向けた取り組みを積極的に進める自治体を公募し、経済・社会・環境の三側面の統合的取り組みにより新たな価値を創造する提案を行った自治体を認定する制度。「自治体SDGsモデル事業」は、その中でも特に先導的な取り組みを行っている自治体の事業が認定を受ける。ちなみに2020年に仙台市、2022年に大崎市も未来都市に選定されている。。

「すでにSDGs未来都市に選ばれている2市は、未来都市計画に則って今後もさまざまな施策を行っていきます。取り組みの内容は自治体で異なりますが、解決したい地域課題は共通しているので、ここに女川町も加わって、圏域として連携・協力できるところは一緒にやってきましょう、というのが今回の宣言の内容です」と阿部さん。

2市1町で共通の課題・人口減少についても、石巻市単独ではなく、石巻圏域として人を呼び込む取り組みへと舵を切った。

石巻市役所内の各所にSDGs普及啓発の掲示がされている。

石巻市がこれまで行ってきたSDGsの取り組み

「自治体SDGsモデル事業」に選定された石巻市は、どのような事業を提案したのだろうか。石川さんは、「経済、社会、環境の三側面を好循環でつなぐ、グリーンスローモビリティ、コミュニケーションロボット、地域交通情報アプリケーション(ローカル版MaaS)を活用した取り組みです」と語る。

ハイブリッドカーのモーターをリユースし、地元の自動車整備工場と連携して時速20キロ未満で走行するグリーンスローモビリティを作り、高齢者の外出をサポートする。雇用の創出、高齢者の孤立防止・健康増進、低炭素社会の実現などを目的に掲げ、それぞれが相互に作用し合う仕組みだ。実際に、2021年から東日本大震災の防災集団移転団地・のぞみ野地区で試験的に導入しており、利用者たちの評判も良いという。

100%自然エネルギーのグリーンスローモビリティ。

「もちろん、当初の計画どおりにはいかない部分も多々あります。例えばグリーンスローモビリティは、坂道が多い地域での走行ではバッテリーの消耗が激しく、性能を改善する必要があります。また、乗車予約はコミュニケーションロボット『ATOM』を使って行う想定でしたが、ATOMが方言をうまく聞き取れず、やはり電話での予約がよいということになりました。この事業はまだ始まったばかりですから、いろいろな要望を聞きながらブラッシュアップしていきます」

コミュニケーションロボット「ATOM」は、石巻市のSDGs広報大使。SDGsシンポジウムの司会なども務める。

2市1町で力を合わせ、普及と啓蒙に取り組む

今後、石巻圏域としては、まずSDGsの認知度向上に取り組んでいく。これまで各自治体で制作していた広報物や、普及啓発の施策も統一していきたいという。例えば懸垂幕や記者会見のバックボード、学校への出前講座、アプリ開発、各種フォーラムへの参加など、2市1町という大きな規模感で臨むことによって、さらなる住民へのPR効果も期待できる。

「令和元年度からSDGsの取り組みへの認知度について石巻市民へのアンケート調査を行っています。初年度は19%ほどでしたが、令和2年度は26.5%、令和3年度は59.3%と徐々に普及啓発の効果が現れています。石巻圏域でSDGs推進宣言を行った今年度は、全国メディアでも報じられたことでさらに関心度が高まっていることを期待します」と阿部さん。

また、石巻市が独自で取り組んでいた「いしのまきSDGsパートナー」についても、今後は圏域に広げていく計画がある。これは、SDGsの普及啓発やSDGsの達成に向けた取り組みを行う企業などを「パートナー」として登録し、自治体とパートナー企業が連携することで、より効果的な普及啓発を図る制度のこと。パートナー企業は自治体ホームページと相互にリンクし、ステッカーとロゴマークが提供される。

石川さんは、「パートナー企業側にメリットがあるような施策も考えています。」と語る。

「いしのまきSDGsパートナー」ステッカー。今後は圏域のデザインに変更する。

2市1町それぞれが広域的な視点に立ち、圏域としてのスケールメリットを活かしながらSDGsの理念の普及を図ることにより、地域課題解決と、持続可能な社会の実現に向けた大きな一歩を踏み出せる。石巻圏域としてのチャレンジはまだ始まったばかりだ。

「住民が安心して住み続けられる石巻圏域を目指し、未来を見据えた取り組みを推進していきます」と決意を新たに。

石巻市 復興企画部SDGs移住定住推進課
住所:宮城県石巻市穀町14-1
TEL:0225-95-1111(代表)

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