自動化装置を、ダントツに良く、速く、クライアントと共創する仕組みへ

VOL.44 株式会社SOLINK(ソーリンク)
ものづくりの現場をサポートするために様々な業種の自動化・省力化の装置の製造を行なっている黒川郡大和町テクノヒルズにある株式会社ソーリンク。クライアントのニーズに合わせて、生産設備や自動機、省力機器、検査機、測定器などを、「設計~製作~現場設置」まで自社で一貫製造を行なっている。当社が誇る高度な技術力と設計・提案力が、東北のものづくりの現場にどのように活かされていくか、取材した。

 

「東北のものづくりを盛り上げたい」という想いで立ち上げ

「この会社を立ち上げる前は、ファクトリーオートメーション関連のメーカーで営業職をしていました。私自身生まれは四国なんですが、仙台営業所の配属でずっとこの地域の工場を見て来たため、自然と東北のものづくりに興味を持ちました」と話す桐山秀造代表取締役社長。
ファクトリー・オートメーション(Factory Automation:FA)とは、人が行ってきた作業を自動化することで、コスト削減、品質向上、安定供給などを実現する生産システムの総称だが、営業活動で東北の工場を回る中で、15年間培ったきたこのFAのノウハウをもとに「東北の製造業を強くしたい、盛り上げたい」という気持ちになったと言う。
「当時、東北地域では生産設備の自動化装置を提供できる企業はあまりありませんでしたね。しかし、実際には工場の方でかなりのニーズがあると感じていました。自分で自動化の工場を立ち上げれば、地域の企業とWin-Winの関係で盛り上げられるのではという思いが強くなってきたんです」。

FAのノウハウで東北のものづくりに貢献したい。ソーリンク創業の想いを語る桐山社長

例えば、自動車業界、医療業界、電子機器業界では、品質保証と安定供給が求められるため「自動化装置」は必要不可欠。また、少子化時代で深刻化している人手不足からも自動化のニーズは高まっている。このような社会状況を目の当たりにして、桐山社長は一念発起して自動化装置を製作する会社を創業した。それがこのソーリンクだ。
「豊富な知識と経験を持つ技術者が設計から対応して、製作、そして納入、立ち上げまで行う会社です。卓上設備から大型のライン設備までお客様の要望に沿って最適な設備を製作しています」。

2001年に、仙台市泉区にて資本金500万にて創業。2006年には、現在30m×20mの製作スペースがある黒川郡大和町テクノヒルズの本社工場に加え、富谷工場、中国常州市にある索林柯(ソーリンク)の3拠点で設備製作を行っている。
「ソーリンクという名前は、双方向に繋がるという意味です。設計から立ち上げまで、お客様の想いとしっかり双方向に繋がって、お客さまの期待に応える高品質な製品をスピード感を持って製作・納品していくことを目指しています。ものづくり技術で地域社会の発展に貢献できる信じ、日々の業務に邁進しています」。

左から本社工場、富谷工場、中国常州市の索林柯(ソーリンク)の3拠点で設備製作を行っている。

後戻りのないよう設計段階からクライアントの緻密なやりとり

「ダントツに良いものを速く創る」。これはソーリンクが自動化装置を製作する上で第一に掲げているミッションだ。どのような形でこのミッションを実現しているのだろうか。
「速く創るために、常にいろんな新しい取組みにチャレンジしています。キーにしているのが、フロントローディングという開発手法です。」と語る桐山社長。フロントローディングとは、Front(前)にLoading(負荷をかける)という意味で、設計や企画などものづくりの前工程に労力をかけて生産・保守の段階まで想定して品質やコスト、仕様などを作り込むこと
を目指すものだ。そのひとつの取り組みとして、早い段階から設計の共有の仕組みを変え、設計支援ツールであるCADを2次元から立体的に確認できる3次元のものに入れ替えている。メカ組立者も紙の図面ではなく、3DCADを操作して組立業務を行っていると言う。
「ソーリンクのコンセプトはお客様と双方向のやりとりを設計段階から深く行うことです。実際に装置を使う製造部のオペレーターの方に早い段階から設計を見てもらい、意見をもらい設計変更、後戻りのないようにしています。ただ製造部の方は図面の見方に慣れていないので、2次元のCADを見てもなかなかイメージがつかないです。3DのCADであれば、立体的でわかりやすくイメージを共有することができます」。

さらに強力なシステムがある。3次元CADなどの設計データをバーチャルリアリティ(VR)空間で再現するというシステムだ。実際に装置を使うオペレーターの人が、設計の段階から参加できるというものだ。ゴーグルを装着して、実際に装置を稼働させるシミュレーションを行う。その際、機械に触れるとブルブルと振動して触覚として距離感や配置などを認識できる。

「図面を見ることができないオペレーターの人が、実際のシミュレーションによって設計の問題点をつかむことができるので、早期に問題が解決でき、後戻りもなくなるので、結果的に生産効率が大幅に上がってきます。ダントツに良いものを速く創る上で、とても有効な手法になっています」。

より良く、より速く。このミッションを実現するために、フロントローディングという開発手法がポイントになるという

多様な領域に導入される自動化装置。「試行錯誤」は欠かせない

「例えば電子分野では小型で高精度な装置、車載分野では複数工程を組み合わせた大型装置、医療分野では清浄度を意識した設計・製作というように、業種によって求められる仕様・機能が違っています。ですので、機械と言っても同一仕様の画一的なものを作っているわけではありません。このように多種多少な業界のニーズに応えられる技術が必要になります」と語る桐山社長。そして、各業種で得たノウハウを蓄積し、高い品質の製品づくりに活かしていく。このソーリンクの多様なニーズに応える製造ノウハウが、電子分野、車載分野、医療分野と、多様な業種での実績を生み出している。

「しかし、我々の仕事は新しい機械を作るだけで終わりません。機械を動かして、しっかりとした製品ができるかが一番大切ところです」と機械が正確に稼働することへの対応を強調する桐山社長。ポイントとなるのは生産数(投入数)に対する良品の割合を示す「良品率」で、この良品率を上げる取り組みを独自に行なっている。
「オリジナルの新しい機械ですので、実際に動かしてその動作を確認するしかありません。我が社の工場の方に機械の現場と同じ環境を作り、実際に稼働させるという流動テストを行っています。何回も実際に回してみて、出来上がった製品の良品率をチェックします」。
まさに「試行錯誤」。装置が出来上がってからも、ある一定期間流動テストを実施して、不具合がでないか確認するという。「ダントツに良いもの」をつくるために、ソーリンクのあくなきチャレンジは続いている。

 

これからを担う人材育成。考えてモノをつくる人を増やしていきたい

「我が社の強みは、お客様のニーズや課題にあわせて、量産型ではないオーダーメイドの機械を作ることができるということです。またフロントローディングということで、はっきり顕在していないニーズや想いを形にしていくという技術や能力がポイントになります。ですから、必然的に社員はオリジナルなアイデアを生み出す発想力・クリエイティブ力が必要となります」と語る桐山社長。

人材不足が問題とされる時代ではあるが、ソーリンクでは単に機械を作れるだけでなく、今までにないものを作る発想力のある人材が必要だと考えている。従来の機械メーカーのイメージとは違ってきているようだ。
「多様な業種に関わる仕事ですし、新しいものを生み出す力も必要になります。業種が違えば求められる技術・仕様も異なり、その過程・構図を描くことが重要なことです。もの作りが好きだ、作り上げていく過程そのものが好きだという若い人を多く育てていきたいですね」。

新しいものを創るにはリスクがある。だからこそクライアントと共同で作り上げていく。その際の試行錯誤の過程こそがソーリンクの強みなのかもしれない。新しい感性と発想力を持ったソーリンクが、東北の「ものづくりのこれから」を担っていく。

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