AI×アナログで東北から日本を変革するゴリラたち

VOL.71
株式会社デジタルゴリラ

東北のビジネスシーンに新たな風を吹き込む企業がある。その名も「株式会社デジタルゴリラ」。一度聞いたら忘れられないこの社名の背後には、日本の生産性革命を目指す壮大なビジョンと、デジタル時代における人間力の本質を問う深い哲学が隠されていた。代表取締役の菊池 習平さんと取締役COOの千葉 勇志さんにお聞きした。

■SNSの投票で決まった社名に込められた真意

2021年7月28日、デジタルゴリラは産声を上げた。この日付は代表の誕生日でもあるという偶然が重なる。
「社名が面白いとよく言われるのですが、決定の仕方も面白いと言われます」と菊池代表は話すように、社名の決定プロセスもユニークだった。当時のTwitter上で「法人立ち上げるから名前何にしようかな」という軽い投稿から始まり、フォロワーから寄せられた様々な案の中から候補を絞り、最終的にアンケート形式の決選投票を実施。結果は圧倒的多数で「デジタルゴリラ」が勝利を収めた。

「つまり、この社名は創業者が独断で決めたものではなく、世間がつけてくれた名前なのです。」一見すると遊び心満載のネーミングだが、後に会社の理念や評価制度、採用基準、教育制度に至るまで、すべてがこの「ゴリラであること」を軸に設計されていく。当初は後付けだった理念が、今では企業文化の核心となっている。

現在、デジタルゴリラは4期目を終え、5期目の半ばに差し掛かろうとしている。社員数は約10名だが、2030年までに100ゴリラ、つまり100名体制を目指している。
千葉取締役は話す。「この100名すべてが人間である必要はないです。50名は人間、残り50名はAI社員というのも考えられますね。」
「営業ゴリラのゴリ蔵」といった名前を持つAI社員たちが、人間と肩を並べて働く未来を描いている。

 

■合併で加速した成長──二人のゴリラの出会い

菊池代表と千葉取締役の出会いは約5年前、共通の知人を通じてだった。当時は互いに独立して事業を営んでおり、毎週一緒にバスケットボールをする仲だった。バスケの後は決まってラーメンを食べに行き、先に独立していた菊池代表が先輩として相談に乗る──そんな関係性だった。

菊池代表から「いっしょにやろう」と合併の話が持ち上がったのは突然だった。千葉取締役は最初合併に前向きではなかったが、より早く成長したいという思いはずっと持っていた。そして決断に導いたのが「デジタルゴリラ」の可能性だった。「合併するなら『デジタルゴリラ』の社名を残したい、と菊池代表に伝えました」と話す千葉取締役。

合併後、デジタルゴリラは急成長を遂げる。この1年半で売上は3〜4倍に拡大。2024年7月には東京支店も開設し、活動範囲を福岡県、大阪府、三重県、青森県へと広げている。この成長を支えているのは、強いゴリラたちが次々と入社し、驚異的なスピードで成長を続けているからだ。菊池代表は自信を持って言う。「東北だけでなく日本全体で見ても、相当優秀な人材が集まっている」と。

■生産性向上が生み出す「ウホウホ」な社会

デジタルゴリラが掲げるミッションは「日本人がウホっと働ける社会を作る」だ。
一見ユーモラスなこの表現には、日本社会の現状に対する強い危機感と、その変革への真摯な思いが込められている。

環境問題や少子高齢化など、日本は数多くの社会課題を抱えている。そうした中で、デジタルゴリラは人々が日々の生活に追われ、豊かさを実感できていない元凶を「生産性の低さ」にあると捉え、その解決に全力を注いでいる。

生産性が低いということは、同じ収入を得るためにより多くの時間を働かなければならないということだ。その結果、人々は生活のために働く時間に追われ、自分のやりたいことや新しい経験、学びの機会を失っていく。この悪循環を断ち切るために不可欠なのが、生産性を高めることによる「余白」の創出だ。

効率化によって時間的・思考的な余白が生まれれば、人々は様々な経験を通じて成長し、人生を豊かに楽しむことができる。この状態こそが「ウホっとしている状態」であり、デジタルゴリラが実現したい社会の姿なのだ。

「興味深いのは、この理念に共感する人材が自然と集まってくる点です。面接に訪れる候補者の多くが強い成長意欲を持っていて、さらに成長する環境としてデジタルゴリラを選んでくれています。入社後、深くデジタルゴリラのミッションやビジョンを自分事に捉え、活躍してくれています。」
社名が持つブランディング効果は、採用面でも大きな力を発揮しているようだ。

 

■マーケティングDXとAX──二本柱の事業戦略

デジタルゴリラの事業は大きく二つの柱で構成されている。一つはマーケティングDX事業部、もう一つはAX事業部だ。

マーケティングDX事業部では、AIとマーケティングを掛け合わせたサービスを提供している。SNS運用、ウェブ広告、ホームページ制作など、デジタルマーケティングの幅広い領域でリサーチ〜戦略立案〜実行までノンストップで行い、クライアントの成果に貢献している。従来型のウェブマーケティング企業と一線を画すのは、AI技術を積極的に活用し、より効率的で効果的な施策を実現している点だ。

一方、AX事業部は同社の独自性が最も際立つ領域といえる。AXとは「AI Transformation(AIトランスフォーメーション)」の略であり、AIを単なるツールとしてではなく、企業の業務プロセスや組織文化、経営の仕組み全体を変革する取り組みを指す概念である。株式会社デジタルゴリラはこのAXの概念の下で、企業のAI導入支援と組織変革推進を積極的に行っている。

AX事業部を立ち上げた千葉取締役は、この事業の本質を次のように説明する。
「AIを個人やタスク単位で活用して効率化するだけでは不十分だと考えます。AIは産業構造やビジネスモデルそのものを根本から変革する力を持っています。したがって、組織全体を変革しなければ、企業は生き残れない時代が来ると思います。」
AX事業部が提供するのは、単なるAIツールの導入支援ではなく、AI時代に適応した組織への変革を伴走する包括的なサービスなのだ。

具体的には、AI導入のための研修プログラム、組織への浸透を支援する伴走サービス、AIエージェントの開発などを手がけている。クライアントは東北地域を中心に、明治時代から続く印刷会社、安土桃山時代からある呉服店、大規模な製造業など多岐にわたる。地場の老舗企業が、時代の変化に対応するためにデジタルゴリラをパートナーに選ぶケースが増えている。

■デジタル推進に最も必要なのはアナログの力

デジタルゴリラの真の強みは何か。
この問いに対する菊池代表の答えは明確だ。「『ゴリラであること』に尽きます。」
一見すると冗談のように聞こえるが、ここには深い洞察がある。

DXやAXを推進する上で最も重要なのは、実は最もアナログな要素──人間力なのだ。どれだけ優れたデジタル戦略を立案しても、どれだけ精緻なデータ分析を行っても、現場が動かなければ何も変わらない。経営層やマネージャー層は理解しても、現場の従業員一人ひとりが同じ目標に向かって動くかどうかは別問題だ。

ここで力を発揮するのが「あたま」「ちから」「なかま」の3つの要素を兼ね備えた「ゴリラ」的な存在だ。
「あたま」とは本質的な問題を特定する「戦略思考」であり、「ちから」とは深くクライアント業界や市場を理解し、真の成果につなげていく「実行力」。そして「なかま」とは「この人に任せたい」と思われる「信頼」を構築し、成果を出すために組織やチームを「動かす力」だ。
リーダーシップがあり、主体性と創造力を持ち、時に抜けていて愛される要素もある。そんな人物が「よし、やるぞ」と声を上げたとき、現場は動く。データや論理だけでは動かない人間の心を動かすのは、結局のところ人間力なのだ。

「デジタルゴリラでは、この人間力を『ゴリラであること』として言語化し、評価制度、採用基準、教育制度のすべてに組み込んでいます。」社員全員がゴリラになるための教育を受け、ゴリラであることが評価される。この一貫性が、組織の強さを生み出している。

創業当初はここまで深く考えていなかったという。しかし、地域で活動する中で、東北の経済が知り合いのネットワークで回っている現実に直面した。世界中どこでも選ばれる価値を持つ企業になるために、自分たちの強みは何かを俯瞰して考えたとき、答えは「ゴリラであること」だった。

■東北から日本を変える──AIカンファレンスへの挑戦

2026年1月、デジタルゴリラは大きな挑戦に打って出る。「東北AIカンファレンス2026」の開催だ。このイベントには、東北の産業構造を変革したいという強い思いが込められている。

東北へのデジタルトレンドの到達が遅れがちなことなどが背景にあり、小規模なセミナーや勉強会はあったが、最先端の知見が集まる大型イベントは皆無だった。

さらに深刻な問題がある。優秀な人材が首都圏に流出し続けている。その理由は明白だ。より新しい、より先端的なビジネスに関わりたいと思えば、首都圏を選ぶのは当然だからだ。

「我々は東北で生まれ育ち、東北に愛着を持っています。家族や仲間がここで生活しています。東北の経済が発展することは、自分たちの生活を豊かにすることに直結します」と菊池代表と千葉取締役は声を合わせる。AIは、インターネットが普及し始めた時以上に、ビジネス構造を根本から変える力を持っている。大きな変革の波に乗れば、地域の魅力的な製品やサービスを全国、世界に届けられる企業に成長できるチャンスがある。そのきっかけを作りたい。それが東北AIカンファレンス開催の動機だ。

デジタルゴリラの挑戦は続く。2030年までに100ゴリラ体制を実現し、東北から日本全体に影響を与える企業へと成長する。その過程で、AIとアナログの融合、デジタルと人間力の調和という、これからの時代に必要な新しい働き方のモデルを示していくだろう。

2026年1月28日(水)開催の「東北AIカンファレンス2026」の申し込みURLはこちら
https://digital-gorilla.co.jp/tohoku-ai-conference/

 

株式会社デジタルゴリラ
宮城県仙台市青葉区荒巻青葉6-6-10
https://digital-gorilla.co.jp/

 

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