「普通科でダンス専攻」という新しい学びのカタチへ。選択から始める「好きなこと探し」

Vol.36
聖和学園高等学校 普通科 ジェネラルスタディコース アクティブアート系 ダンス専攻

仙台市の聖和学園高等学校では、「個性と課題解決力を磨き、希望進路の実現へ」をビジョンに掲げたジェネラルスタディコースを設けている。ジェネラルスタディコースとは一般的に普通科、つまり基礎学力を養う一般教養課程を指すが、聖和学園高等学校の同コースのカリキュラムで特に注目したいのが、2年次から選択可能な「アクティブアート系」などの系統である。この「アクティブアート系」という系統にはスポーツやビジネスのほか、ボイストレーニングや今回取材したダンスに至るまで、実にさまざまな専攻科目が設置されているのだ。そこで今回、ダンス専攻・メイン講師の鴻巣 宇蘭(こうのす うらん)さんと生徒たちにお話を聞きながら、聖和学園高等学校が取り組む「個性と課題解決力を磨く」教育の現場を取材させていただいた。  

自分で考え、選んで決めることの大切さ

「普通科 ジェネラルスタディコース アクティブアート系 ダンス専攻」の学び舎、聖和学園高等学校・三神峯キャンパス。

「普通科でダンス専攻のような系統を選択できることが一番の特徴」と鴻巣さん。

「他の学校にはないコース」として設置され、本年2023年に3年目を迎える、聖和学園高等学校のジェネラルスタディコース。鴻巣さんはコースの特徴について次のように話す。 「一番の特徴は、普通科の学びの中で、ダンス専攻のような系統選択ができることだと思っています。一般教養課程に加え、生徒たち自らが選ぶ専攻からも、自身の新たな個性や課題解決力を見つけ出してもらいたいですね」。 普通科での学びは、ともすれば万遍なく一般教養を深めるための平準的カリキュラムに偏りがちだ。しかし、それだけでは他の誰とも違う個性や課題に直面したときに解決し、乗り越える力を養うことは難しい。普通科として、教科書に書いていない大切なことも、生徒たちに教えていく必要があるのではないか。鴻巣さんはその答えを明かすかのように、話を続けてくれた。 「生徒たちに、受け身でない、自ら考え、選んで決めるという姿勢の大切さを教えたいと考えています。私の経験上、社会に出てから役立つのはそういった決断力や能動的な行動だと思うのです。ただし、それも基礎学力の定着という、ベースの部分を築いたうえでの話。基礎と応用の両立をもって、汎用性と専門性の両方を磨くことで、より高い視座と広い視野で活躍できる人材を目指すのが、ジェネラルスタディコースです」。 選択と決断、そして汎用性と専門性の両方の大切さを教える同コースが、「普通科の学び」に新たな風を吹き込もうとしている。

ダンス専攻ならでは!自由度の高い学び

生徒たちにとって自分が踊りたいジャンルを希望できるのは大きな魅力。

チームのメンバーは皆、自分で選んでダンス専攻の学びの場に集っている。

鴻巣さんがダンス専攻の学びはとにかく自由度が高い。週に4時間という範囲内で、実際にダンスを練習する授業のほか、筋肉や体の仕組みについての座学もある。座学ではアメリカで誕生したダンスの歴史など、普通の教科書には載っていないようなことも、しっかり学んでいるそうだ。 さらに、授業のテーマのほとんどを生徒からの発案によって決めているという。 「ヒップホップ、ハウス、ロック、ブレイクなど、ダンスにはさまざまなジャンルがあります。そこでまず、どのジャンルのダンスを授業で踊るかを、生徒一人一人の希望をもとに、みんなで話し合って決めます。もともとダンスは一人で踊るときもありますが、チームで踊ることの方が多い。メンバーや仲間同士でどんなダンスをつくりあげていくかを議論したり、みんなで踊る中で改善点を探し合ったりするその繰り返しが、協調性やコミュニケーション力の習得・向上につながっていることは確かだと思います」と鴻巣さん。 ダンス専攻のメンバーは、いわば全員が「自分で決めて選ぶ」という共通のプロセスを経て集った仲間でもある。そんな彼らだからこそ、共感できる部分があり、一つの絆で結ばれやすいのかもしれない。

「何を好きになるか」ではなく、「なぜそれを好きだと感じたか」が重要

ダンス専攻の仲間たちと『DANCEX』などのイベントにも出場。

若い高校時代に、自分で決めて、選択し、考えながら、仲間と一つのものをつくりあげていく経験を。

鴻巣さん自身、中学生時代にダンス部に入りたかったが、当時はまだダンス人口そのものが少なかったことから親にも反対され、入部するだけでも今では考えられないような勇気が必要だったという。 「時代は変わりました。生徒たちには好きなことに自信を持って取り組んでほしいと思っています。生徒たちがこれから高校を卒業し、社会に出たその後で、自分自身を動かしたり奮い立たせたりする原動力になるのは、そのときやっていることがどれだけ好きか、だと思うからです。ただしその一方で、3年間という短い高校生活の中で好きなことを見つけるのは難しい場合もあります。だからこそ、高校時代に自分でこれをやると決めて、選択し、考えながら仲間と一つのものをつくりあげていく経験を、どんどんさせてあげたい。そして、本当に自分が好きだと思える何かを、見つけてほしいと思います」。 自分が好きなことを見つけるうえで一番必要なもの。それは、「何を好きになるか」ではなく、「なぜそれを好きだと感じたか」ではないだろうか。さらにいえば、誰かではない自分自身が決めて選んだというリアルな経験が、自信につながり、嘘偽りでない「好き」を生み出す。鴻巣さんのおもいを聞き、そう思わずにはいられなかった。

【在校生インタビュー】ダンス専攻を選んで良かったと思うこと

「自分一人の希望を通すだけでなく、仲間との協調も大切だと思います」という釼明さん。

「コミュニケーションによって、チーム全体でダンスのクオリティを高めていく過程が面白い」と話す古関さん。

◎ダンス専攻3年生 釼明 菜々華(けんみょう ななは)さん
「もともと踊ることが大好きで、小学校1年生からチアダンスを習っていました。他のジャンルのダンスも踊ってみたいという理由からダンス専攻を選択。自分が踊りたいジャンルについて希望を出せる点がダンス専攻の一番の魅力だと思います。ただ、チームで踊ることが多いので、自分一人の希望を通すだけでなく、他の専攻の仲間とお互いの意見を尊重しながら、一つの目標に向かって取り組んでいくことの大切さも学んでいます。将来の目標は保育士になること。子どもたちに、ダンスの楽しさと、仲間と一緒に何かをやり遂げる大切さを教えたいと思っています」。

◎ダンス専攻3年生 古関 輝人(こせき てると)さん
「マイケル・ジャクソンへの憧れをきっかけに、小学生からダンスを始めました。ダンス専攻では、チームメンバーとのコミュニケーションの大切さを学んでいます。それぞれの役割に徹しつつ、今メンバーが何を考えているか、自分に何を求めているか、などを考えながら踊り、チーム全体でダンスのクオリティを高めていく過程がとにかく面白い。文化祭や地域のイベントなどにみんなで出る機会もあり、それに向けて練習しているときも大切だなと感じるのは、やはりコミュニケーションです。将来の夢はインテリアデザイナー。チームで仕事をすることが多い職業なので、ダンス専攻での学びから、今のうちにもっと、コミュニケーション力を身に付けておきたいと思います」。

聖和学園高等学校 普通科 ジェネラルスタディコース アクティブアート系 ダンス専攻
住所:宮城県仙台市太白区土手内2-1-1(三神峯キャンパス)
TEL:022-304-2030

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