東北電力グループ発のビジネスプラットフォームが目指すもの。
Vol.12
東北インテリジェント通信株式会社
近年注目されているBtoBのビジネスマッチングサービス。オープンイノベーションが一般化してきたことや、コロナ禍によって従来の対面営業が難しくなったことなども影響していると言われる。そんな中、東北電力グループの情報通信会社「東北インテリジェント通信株式会社」(以下トークネット)が2021年11月、法人向けデジタルプラットフォームサービス「よりそう東北コネクト」を開始し、徐々に登録者数を伸ばしている。ICTの会社がプラットフォーム事業を始めた理由は何なのか、齋藤恭一社長に伺った。
グループの資産を活かしてお客さまのニーズをマッチング
「よりそう東北コネクト」は、いわゆるビジネスマッチングサイトで、「困りごと」や「アイデア」を持つ企業と、それを解決したりカタチにできる「ソリューション」を持つ企業が、その名の通り“つながる”場だ。
お客さまのニーズをマッチングさせるデジタル系サービスは、法人向け、個人向けを問わず、クラウドファンディング的仕組みを取り入れたものや、オープンイノベーションをベースとしたものなど、すでにさまざまな取り組みが広がっている。その中でポイントとなるのは、他との差別化だ。
「よりそう東北コネクト」が他と大きく違うのは、東北・新潟の法人に特化したサービスであることと、東北電力グループ“発”であること。トークネットの齋藤恭一社長は、事業を立ち上げた経緯をこう話す。
「事業スタートには二つの背景があります。一つは、東北電力グループが培ってきた資産を、東北・新潟の法人さまにご活用いただきたいという思いです。東北電力グループは創業以来、『東北の繁栄なくして当社の発展なし』の考えのもと、地域とともに歩み続けてきました。その間、東北と新潟の企業・官公庁・教育機関など多くの皆さまと“つながる”という財産を築くことができました。 “つながる”の基盤を活かしたプラットフォームが、東北・新潟の法人さまの価値創造の場として活用され、エコシステムの基盤となることを目指しています」。
二つ目の背景は、トークネットの事業活動を通じたニーズに基づくという。
「当社は、通信を核とするICT事業者として、営業担当が直接訪問する“リアルな活動”を展開してきました。しかし、コロナ禍で対面での営業活動が難しくなり、オンラインによる“デジタルな活動”を融合することの重要性・有用性を再認識しました。同じように“デジタルな活動”にニーズをお持ちの企業は多いと思います。そのようなことで、東北・新潟の法人さま同士がつながるデジタルプラットフォームがあれば、ご利用いただけるのではないかと考えたのです」。
プラットフォーム「よりそう東北コネクト」開設までの経緯
東北電力グループは、2020年2月に『東北電力グループ中長期ビジョン“よりそうnext”』を策定した。グループスローガン「より、そう、ちから。」の下、「お客さまにより沿い、地域に寄り添う」企業グループとして、2030年代に「東北発の新たな時代のスマート社会」の実現に貢献することを宣言している。こうした中、当時、東北電力のグループ戦略部門に在籍していた齋藤社長によって、デジタルプラットフォームサービスの検討が進められたのである。
「2021年4月にトークネットの社長に就任したことで、プラットフォーム事業も引き続き進めることになりました。トークネットはICTの会社ということもあり、ネットワークインフラや法人営業の基盤など、この事業を実現する場所としてフィットする会社だったんです」。
「よりそう東北コネクト」が事業着想からリリースまでに要した期間は約1年。内容にもよるが、一般にプラットフォームなどのシステムをスクラッチで開発したら、数年かかる場合もあると言われる。「よりそう東北コネクト」は、なぜ短期間でリリースすることができたのか。
「プラットフォームの立ち上げに必要なことは大きく三つあります。一つが事業コンセプトの設計、二つ目は基盤となるシステム設計、三つ目は進めるための体制です。一つ目はさまざまな事業計画を並行して検討する中で着想したものだったので、かなりクリアに進めることができました。課題は二つ目のシステムでした。もし、1から自前で作ろうとしたら実現までに年単位の時間がかかることが分かっていました。だからシステムの部分は、当社の作った事業コンセプトと適合する外部のパートナー企業を探そうと決めていたのです。幸いBtoCプラットフォーム事業で、先進的な取り組みをされていた会社さんにご協力いただくことができました」。
実現するためのビジネスプランが早い段階で明確だったことに加え、システム開発に相当する部分にロスがなかったことが、スピーディーなサービス開始を可能にしたようだ。
東北電力ブランドの信頼力で“つながる”サービス
「よりそう東北コネクト」は、東北・新潟の法人が持つ「困りごと」「アイデア」「ソリューション」を、デジタル空間でマッチングさせるサービスで、三つの“つながる”をお手伝いする。一つ目は、困りごととソリューションがつながる「e商談」。困りごとやニーズを持った会員法人と、解決策やソリューションを持った会員法人が商談を行う機会を提供する。二つ目は、アイデアや困りごとがつながる「eインキュベーション」。事業・サービスの開発・拡大を目指す会員法人が、他の会員法人との協業・協創を呼びかけることができる。三つ目は、情報がつながる「e掲示板」。会員法人がイベントやお役立ち情報などを発信することができる。
では、具体的にどんなことができるのか、利用者にとっては気になるところだ。
「例えば、一つ目の『“つながる”e商談』では、テレワークやDXといったICTを使った取り組み、カーボンニュートラルやSDGsといった課題に資するような取り組みなどについて、各法人さまが抱える問題を解決することが可能となります。二つ目の『“つながる”eインキュベーション』では、遊休土地をお持ちの会員法人さまが、その利活用プランを提案してくれる会員法人さまとつながれば、新事業を立ち上げることも可能となります。東北電力グループが持つ豊富な資産を活用した協業などについてもご案内できると考えています。三つ目の『“つながる”e掲示板』では、国や自治体の補助金に関することなど事業者支援情報も掲載します」。
齋藤社長はさらに続ける。
「“つなぐ”という機能が単に商談だけでなく、新しい事業を作るとか、新しい商品を開発するとか。協業により自社の強みと外部のリソースや知識を掛け合わせることで、新たな価値を創造することができます。いわゆるオープンイノベーションですね。そうした法人さま同士がより広く深く“つながる”機会をつくるお手伝いをしていきたいと、考えています」。
東北・新潟におけるスマート社会の協創を目指す
サービス開始から約半年が経過し、「よりそう東北コネクト」は、登録者数・コンテンツ数ともに徐々に拡大し、いくつかのマッチング事例の他、商談を超え検討に着手した案件も発生している。
「6月半ばの時点でコンテンツ数は70を超えました。初期段階では東北電力グループが扱う商材から始めましたが、その後は分野を問わず提案活動の中でご賛同いただいた方々が登録されて、さまざまな商材に拡大しています。我々の目的が東北・新潟の法人さまのご支援ですので、自治体さまの補助金情報なども早い段階から発信しています。また、トークネットの通信インフラ設備を建設・維持するために、100社以上の工事会社の皆さまに支えていただいています。6月初めに『よりそう東北コネクト』を通じて、当社が構築する5G向け通信用局舎を設計または工事するパートナー会社さまの募集を行ったのですが、反響も大きく有り難かったですね。そうした方々の働く環境や問題解決をサポートするようなものも拡充したいという思いはあります」。
齋藤社長は登録者数とともに閲覧ビューも重視している。「多い時で1日3000アクセスの時もありました。これをどれだけ継続的に拡大できるかが重要で、見ていただく回数が増えると具体的にマッチングの機会もある段階から増えていくと思っています。まずは繰り返し見たいと思えるようにコンテンツを充実させることが必要です」と話す。
魅力のあるプラットフォームとするためには、業種や規模に関わらず多くの法人に活用してもらうこと。トークネットでは登録、閲覧を案内する提案活動を継続して行なっている。今後「よりそう東北コネクト」をどのように展開していくのか伺った。
「当社と接点のある法人さまなどへの提案活動を全社的な取り組みに拡大するとともに、コンテンツの質やサービスサイトの機能向上などに努めます。『よりそう東北コネクト』を介した、東北・新潟の産官学連携や世界最先端の取り組みの導入が活発に行われることで法人さま、さらにはその先のすべての生活者の活動がさらに発展し、それにより地域全体の発展に貢献できればと考えています。東北・新潟にこだわるこの活動にぜひご参加ください」。
東北インテリジェント通信株式会社
住所:宮城県仙台市青葉区一番町3丁目7-1 電力ビル2階
TEL:022-799-4201