公園とDX~遊びのトランスフォーメーションで子どもたちと地域を元気に。

Vol.11
株式会社ミヤックス

仙台市泉区寺岡にある株式会社ミヤックスは、清潔感あふれる外観が目をひく、遊具製造事業を主とする会社だ。同社の前身は1949年4月、宮城県栗原郡若柳町で創業者・髙橋正太郎氏が仙北教材社を設立したことで誕生した。学校・教育関係器材を取り扱う事業から始まって、2018年には創業70周年を迎えている。創業当時、戦後間もない厳しい状況下、髙橋正太郎氏は「教育を通じて社会に、地域に貢献したい」との思いからミヤックスの前身となる仙北教材社を立ち上げる。その後、持ち前のチャンレンジ精神で次々に事業を拡大していく中で、ジャングルジム、ブランコ、健康器具などの製造・販売・保守点検サービスを一貫して行う「遊具・修景」部門を発足させた。この「遊具・修景」部門で培われたノウハウが、現在会社の要である遊具製造事業を支えてきたのだ。そんなチャレンジ精神旺盛なミヤックスが、現在推し進めているのがデジタル事業である。特に最近では、公園や遊具づくりとDXの融合に力を入れているという。公園とDXの融合。アナログとデジタルという意味では相反するように思える二つのモノを、一体どうやって融合させるのだろうか。

公園・遊具づくりで培ったノウハウと信念を持ち新たなチャレンジへ

職場にはチャレンジ精神を共有できる仲間がいる。
50年以上前から続く公園づくりと遊具づくり。

「もしかすると、チャレンジ精神は創業時から脈々と受け継がれているものかもしれません。ただし、遊具づくりや公園づくりは、たんにモノをつくればいいというわけではありません。設置する公園や周辺地域をとりまく環境を知り、課題を洗い出して分析し、解決策を講じていく、といった“環境づくり”の視点が重要だと考えています」。
こう話すのは、DIGITAL事業部・マネージャーの星川智洋さん。これまで精力的に新たな事業を展開してきたミヤックスだが、DX時代のニーズに応えるために立ち上げたのが、このDIGITAL事業部だ。星川さんは、若きマネージャーとして同事業部を牽引し、今回の取材のテーマ“公園とDXを融合させた新たな価値づくり”に挑む中心人物でもある。“公園とDX”への新たなチャレンジについて、星川さんに詳しく聞いてみた。

子どもたちの、地域の課題を知らずして、遊びの価値の復興なし

「今、少子化の加速、公園や遊具そのものの老朽化のほか、造成や整備に莫大な予算がかかってしまうことなども背景に、自分たちが子どもの頃、当たり前にあった“近所の公園”は激減しています」。危機感をあらわにする星川さんは、さらにこう続けた。
「現代の子どもたちの遊びは、インターネットやゲームなどが主流ですよね。それは、“あらかじめ出来上がったシステム上での遊び”なので、受け身になってしまいがち。子どもたちの想像力や知恵、一緒に遊ぶ友だちへの思いやりなど、能動的に発するものが失われていくことを懸念しています」。
星川さんが言う想像力とは、例えば10秒間でジャングルジムのてっぺんまで登れたら夢の国へ行けるなど、子どもならではのワクワクするような発想を意味する。また、一緒に遊ぶ友達への思いやりとは、今や危険遊具とされている“回旋塔”で友だちと遊ぶとき、これ以上早く回したら〇〇君が吹き飛んでしまって危険だ、というような、その遊具を使ってみて初めて学習できるルールのことだ。
「公園や遊具でのアナログで原始的な遊びから、学ぶことは多いと思っています。だから遊びの価値を復興したい」と星川さん。星川さんが目指すのは、遊びを通じて子どもたちに“人としての教育を施すこと”なのだ。しかしそういった目には見えない教育的アプローチを、DXのような“デジタル技術”とどうやって融合させるのか。この疑問に対しても、星川さんの答えは明快だ。
「安易にデジタル技術を持ち出して目新しいモノをつくったらそれで終わり、ではありません。私たちミヤックスでは、あくまで遊びを妨げている課題は何なのか、それを抽出し、知ることを出発点としています。最先端のデジタル技術は、あくまで目に見えない課題を可視化し、解決するための手段であり、ツールなのです」。
我々は自分たちの技術力向上や利益だけを追い求める会社でなければ、たんなる技術屋集団でもない。社会や地域の課題を解決することで、顧客や生活者にも満足をもたらす、人と地域のためのプロ集団だ、という強い信念を星川さんの言葉に感じた。

地域の共創型ワークショップの様子。公園で遊具にふれながら子どもと親の声を聞く。

課題抽出の具体的な施策として、ミヤックスでは公園の周辺地域で暮らす親子世帯の住民を対象に、共創型のワークショップを企画・運営。当時の出来事を星川さんはこう振り返る。「参加した子どもたちからは、“塾に行かなくてはならず公園で遊ぶ時間がない”“一緒に遊ぶ友だちがいない”など、さまざまな意見が出ましたね。親も同様です。驚いたのは、親と子で考えていることが全く違っていたこと。子どもへの理解不足が親にあるとしたら、それこそ課題ではないか、と感じました。子どもならでの豊かな想像力に見合い、元気にしてあげられる、我々はそんなものづくりを目指していくべきだと再認識しました」。

安全性が高く、子どもたちの豊かな想像力に見合う遊具をつくる

子どもの気持ちになって構想をカタチに。
学生インターンと共同で遊具の実証実験を行う。

課題を抽出したその後は、子どもの気持ちになって検証を繰り返しながら、いよいよ遊具の検討に入っていく。例えば、恐竜を模した遊具とセットでVRゴーグルを預ける。ゴーグルを装着すれば、白亜紀の光景を仮想現実で体験できる、などのアイデアである。いかにも子どもらしい、夢のある発想だ。「子どもたちの豊かな想像力に見合ったVRゴーグルであれば、塾で忙しい現代っ子でも興味を持って遊んでくれそうですよね」と星川さん。また、宮城県栗原市若柳にある遊具の実験場では、幼稚園や保育園への就職を志望する学生インターンと共同で、徹底した検証作業が行われている。検証スタッフや学生が遊具で実際に遊んでみる一方で、デジタル技術を駆使しながら安全性や利用時の行動予測、許容人数など、定量データをとり、しっかり検証している。
「遊びは想像力を豊かにします。とは言え、安全であることが大前提です。だから安全性のチェックは入念に行います」。面白さの追求だけでは十分でなく、安全面においても優れた品質を確保するため、より大きな責任を自らに課す。ここにも星川さんのものづくりに対するプロ意識を感じた。そのほか、公園が多い泉パークタウンの周遊アプリも開発中だと言う。このアプリは、各公園の見どころや特徴などの情報を周辺飲食店などと共に紹介し、周遊やテイクアウト飲食を促すというもの。どうやら構想は一つや二つではなさそうだ。

人・地域づくりで未来へのトランスフォーメーション(変革)を

新たなチャレンジは人づくり・地域づくり・未来づくりにつながる。

公園とDXの融合。このチャレンジには試行錯誤と葛藤が多いことだろう。それでも、ミヤックスが挑戦を止めないのはなぜか。星川さんは笑顔で答えてくれた。
「遊びと未来の主役は今の子どもたちです。子どもたちを大切に育てていくことが、地域社会の、未来への発展につながると思っています。個性豊かな子どもたちの、未だ開花されていない能力や可能性を引き出してあげたい。またそれを実現させるためには、未来社会を見据えDXなどの最先端技術を追求していくことも必要不可欠だと考えます。子どもたちの成長、地域の発展と共に、自社のものづくり力も向上させていけるよう、私たちは挑戦を続けます」。
ミヤックスが取り組むチャレンジは、遊びを通した“人づくり”と、人で賑わう“地域づくり”の両方につながる。まさに、より良い未来に向けたトランスフォーメーション(変革)だ。

株式会社ミヤックス
住所:宮城県仙台市泉区寺岡1丁目1-3
TEL:022-777-5888

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