キーワードは「自分らしく」。3400人を支えたmanabyが提供する新しい学びの輪

Vol.60 株式会社manaby

「どうしたら自分らしく働けるだろう」。
そんな悩みを抱える人たちを支援するために、2016年に立ち上げられた株式会社manaby。
これまで3400人以上をサポートしてきたmanabyが、2024年12月、放課後デイサービス事業『manaby Campus』を立ち上げた。
大人の就労支援と、子どもの発達支援。同じ“福祉”という枠組みの中、似ているようにも、異なるようにも思える分野。共通しているのは、誰もが自分らしく生きられるように支えたいというmanabyの事業理念だろう。
新事業「manaby Campus」の話を中心に、manabyが大切にしている想いやこれからのビジョンについて、教育支援事業部部長の菊地佑樹さんと『manaby Campus柴田』事業所マネージャーの長谷川光さんに話を伺った。

見落とされてきた人のための新しい就労支援

就労支援事業を主な事業として立ち上げた株式会社manabyは、現在、全国で39箇所の事業所を運営している。2016年に仙台に就労移行支援事業所を開設してから、働きたいと願う多くの人の声に誠実に応えてきた。
「代表の岡崎が就労支援をしたいと事業を立ち上げてから、2つの課題に直面しました」
菊地さんはそう話した。

「当時は障害者雇用への理解が今ほど進んでおらず、障害や地域によって就職の選択肢が限られてしまっていたことがまず1つありました。2つ目は、就労支援制度自体が就労場所への通勤を前提に作られていたため、外出が困難な方へ支援サービスをお届けすることができないことです」
以前の一般的な就労支援事業のプログラムは、面接対策のために事業所へ足を運んだり、研修を受けに施設に出向く必要があったりなど、通勤を想定した内容を中心に作られていた。働きたいという意欲を持ちながらも外出自体が難しい人たちは、当時の福祉の網目からこぼれ落ちてしまっていた。そんな人々の助けになりたいという思いからmanabyは生まれた。

独自のeラーニングシステムを開発し、在宅でも就労訓練を受けられるサービスの提供を開始。同時に、在宅訓練からの在宅就労という新しい選択肢を社会に提示した。悩みを抱える人々の声を聞き逃さないからこそ、manabyは多くの人に必要とされる存在になった。

マスコットキャラクターのマナビーくん。“世界一幸せな動物”と呼ばれるクアッカワラビーをモデルにしている。

 

クルーの声に後押しされた『manaby Campus』

困難を抱える人々の小さな声に耳を傾けてきたmanabyは、2024年12月に放課後等デイサービス『manaby Campus』を立ち上げた。「放課後」という単語からもわかるように、サービスを届ける相手はこれまでの就職を目指す大人から、小学生〜高校生までの子どもに大きく変わった。
サービスの構想自体は、2020年頃からあったと菊地さん。
「クルー(サービス利用者)を支援していく中で、“もっと早くmanabyに出会いたかった”と言われたことがありました。そういった声もあり、manabyとして早い段階で支援が必要な人たちと関わることができる放課後等デイサービスに取り組んでいきたいという話はずっと出ていました。2024年になって体制が整ったので、やっとスタートできました」

大人と子ども。同じ福祉というジャンルの中でも、対象者は全く違う。事業をスタートする上で戸惑いはなかったのだろうか?
「お子さんをお預かりするうえでの安全管理という面で、manaby Campusではスタッフの配置や支援を手厚くする必要はあります。そういった違いはありながらも、manabyとしてこれまで培ってきたスキルやノウハウが存分に活かせそうだと感じているところです」

manaby Campusでは、子どもたちの5つの領域を育むプログラムを展開している。①健康・生活、②運動・感覚、③認知・行動、④言語・コミュニケーション、⑤人間関係・社会性の5領域だ。ベースとなるプログラムに加えて、manabyらしい学びも提供していくと語るのは長谷川さん。

manaby Campusが提供するプログラムの5領域。加えて大きな柱として「地域とのつながり」を大事にしている。

 

「学年と発達によって取り組む内容を少しずつ変え、最終的にはmanabyの就労支援サービスで使っているeラーニングシステムを活用し、自立に向けたITスキルの獲得を目指します。子どもたち一人ひとりに合った選択肢を増やしていけるような支援ができればと考えています」
また、全国にあるネットワークもmanabyの強みのひとつ。
「地域とのつながりを非常に大事にしています。今日も社会福祉協議会さんにお邪魔して、子どもたちが参加できそうな催しについて伺ってきました。現在、東北から九州まで全国で就労支援事業所を展開しているので、ゆくゆくは各地域にあるつながりを活かし、ライフステージに合った支援を提供していけたらと思います。僕たちだからこそできるサービスを探していきたいですね」

事業所内に飾られた絵。丁寧な色ぬりに、思わず頬がゆるむ。

 

manabyが大切にする「自分らしさ」の見つけ方

子どもたちの成長は十人十色。だからこそ、子どもたちに寄り添い、一人ひとりに合ったプログラムを提供することが特に大切になる。manabyのスタッフはどうやって「その子らしさ」を見つけだすのだろうか。
「サービスを提供するにあたり、私たちは“対話”をとても大切にしています」と長谷川さんは力強く語る。

「まずは保護者や学校の方々の話をしっかり聞いて、どういう部分に困り感があるのかを把握します。そのほかにスタッフ同士で意見を交換して方針を決める。とにかく対話をして、それぞれの意見を生かしています」
議論とも会話とも違う、対話という言葉。「自分らしさ」を大切にするmanabyの組織文化にもなっていると菊地さんは話した。
「 “私はこう思うけど、あなたはどう思う?”という小さな主語の問いかけでお互いが感じていることを認識して、違いを認め合う。それがmanabyの対話です」

障害福祉という領域で、違いを認め合うという考え方はとても大きな意味を持つ。
あなたはあなた、私は私。自分は一人しかいないことを理解して、個性を活かせる社会。それがmanabyの目指す「自分らしく生きること」なのではないだろうか。
「manaby Campusの事業を通じて子どもたちの課題を解決することが、社会の問題を解決することにもきっとつながっていると思います」
力強く言い切る菊地さんの隣で、長谷川さんが頷いた。

“うまく”生きるのではなく、“あなたらしく”生きればいいんだよ。manabyの大人にそう声かけされた子どもたちは、大人になったとき、どんな自分でもきっと認められるようになるだろう。
誰もが自分らしく生きられますように。
そう願って、manabyは今日も未来に種を蒔く。

実は大学自体から付き合いがあるという長谷川さんと菊池さん。お互いを信頼し合う2人からは、manabyのチームワークの良さが伝わった。

manaby Campus柴田
宮城県柴田郡柴田町船岡新栄3丁目42-5
HP:https://campus.manaby.co.jp/

関連記事一覧