「みやちゅう」の果敢なチャレンジが、地域にそして業界に静かな革命を生み出す

VOL.69
株式会社みやちゅう

建築資材や園芸用品、ペット用品などのオリジナルパッキングを得意とする会社「株式会社みやちゅう」。その事業姿勢は柔軟で、換気給気口用サイレンサーの開発も行い、その新規性と革新性が業界で高く評価され2024年度グッドデザイン賞や第23回 環境・設備デザイン賞を受賞している。さらに地域貢献にも熱心で、地元学生のインターンシップ受け入れや、高校・大学での出張講座開催など、次世代育成にも積極的だ。このイノベーションパワーはどこから来るのか。畠山正樹取締役営業本部長にお聞きした。

 


有言実行の精神で業態をブレークスルー

仙台市若林区沖野に本社を持つ「株式会社みやちゅう」は、1977年6月に「有限会社宮城中央ブロック工業」としてスタート。「宮城中央」という名称の略語から「みやちゅう」という会社名になったという。会社名の由来を聞いただけで遊び心のあるユニークな発想で会社運営をしていることがわかる。

安全な建物を建てる、健やかな植物を育てる、といった時の支えとなるのが「みやちゅう」の製品だ。国内上位のホームセンター向けにプライベートブランド製品を製造。建築用砂・砂利や、園芸用砂利・肥料のパッケージングなどの商品を扱っていて、「世界中の大地と暮らしをつなぐ」ことを目指している。

畠山正樹営業本部長は「みやちゅう」の会社としてのマインドを次のように話す。
「うちの強みは『できない』と言わず、工夫して実現可能な提案をすることで、量産化を見据えた現実的な製品開発ができること。社長は『有言実行』の精神で、グッドデザイン賞や宮城グランプリの獲得など、公言した目標を達成することで会社の価値を高めています。創意工夫によって時代をブレークスルーするような柔軟な対応が売りで、社員全員が会社の方針を理解して協力し合う文化が根付いていると思います。」


戦略的に受賞を狙える自社製品開発に注力

「みやちゅう」の取り組みで面白い点は、自社製品の開発にも力を入れていることと同時に、「戦略的に」グッドデザイン賞などの各種の賞の認証を目指していることだ。
「賞を狙うと言っても、ただ単に賞を取ることを目的にしているわけではありません。客観的にも評価されるような持続性のある事業展開と地域の価値創造を目指し、長期的な視点で取り組むことを第一に考えています」と話す畠山営業本部長。自社製品の開発を行うことにより展示会への出展が可能になり、大手企業からの共同開発依頼が増えるなど、ビジネスチャンスが広がっているという。

その一例が、「第16回みやぎ優れMONO」に認定された住宅の上下階の騒音低減技術「天井制振材」だ。宮城県産の天然鉱物「ゼオライト」を利用し、住宅の騒音低減製品を開発している。昨年「第16回みやぎ優れMONO」に認定されたこともあり、その性能が評価されて日本全国の新築住宅物件や、ホテルなど幅広い建築物に採用されている。

昨年の認定製品「天井制振材」


新しい遮音技術による製品開発と事業展開

さらに、この「みやぎ優れMONO」で2年連続での認定となって話題となった。大成建設株式会社と共同で24時間換気システム用に開発した給気口用遮音装置「T-Silent Sleeve-静換気(しずかんき)-」が昨年に引き続き「第17回みやぎ優れMONO」を受賞した。
住宅の騒音低減を目指したこの製品は、「Made in みやぎ」をコンセプトに、県内サプライヤー企業の協力を得て開発、製造を行っている。

「従来の24時間換気システムは、外壁に設置した給気口に防音型ベントキャップを取り付けて騒音低減対策を実施していますが、大型となる場合が多く意匠性やコスト等に課題がありました。これに対しこの『 24時間換気給気口用サイレンサー 「静換気」T-Silent Sleeve』は室外から室内に外気を取り込む給気スリーブ内に設置することで、建物外観の意匠性を損なわずに、優れた通気性能を確保しつつ、従来の防音型ベントキャップと同等の遮音性能を得ることが可能としてます。」
本装置は給気スリーブ内部に設置するだけなので、建物の内外観に影響を与えず、また新築だけでなく既存住宅への後付けも可能。さらに、一般的に通気性が低下する傾向にある従来の防音型ベントキャップに比べ優れた通気性能を確保していることが確認されている。
「既存建物の構造を大きく変えることなく音環境を改善できる技術が評価されています。特にホテル業界等からの引き合いが多く、実験的に導入して効果を検証する動きも出てきています。」

「見えないものをデザインする」グッドデザイン賞受賞からの事業拡大

「みやぎ優れMONO」の受賞を皮切りに、一般社団法人 建築設備綜合協会が主催する 『 第23回 環境・設備デザイン賞 』 において設備器具・システムデザイン部門に入賞するなど評価が高まっている『 24時間換気給気口用サイレンサー 「静換気」T-Silent Sleeve』。さらに、2024年度グッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞して話題となっている。

ポイントとなっているものがデザイン性だ。通常、建築やインテリアにおけるデザインは表面に見える意匠的なものだが、この製品では「見えないところ」「見えないもの」のデザインにまでこだわっている。
「従来のような防音型ベントキャップでは、かなり外観デザインに見映えの部分で影響が出てしまいます。それに対して給気スリーブの中に2つの容器を入れるだけのこの製品は外観デザインに意匠性や自由度を提供します。さらに、屋外の空気をスムーズに室内に流す通気性のデザインや容器に工夫を凝らした遮音性能のデザインも重要なファクターになっています」とそのトータルなデザイン性を強調する畠山営業本部長。

遮音性と通気性という相反するものを、同時に実現するためには、多くの試作品を設計し多くの実験を繰り返ししてきたチームでの試行錯誤があったからだと話す畠山営業本部長。デザインの力で静かで快適な住環境を求める消費者のニーズに応えるユニークな製品を生み出す「みやちゅう」。今回の受賞を機に、「静換気」の認知度がさらに高まることが予想され、今後の普及も期待される。

 

学生の職場体験にも積極的。地域内の企業間ネットワーク構築にも

本業以外にも地域における取り組みにも力を入れている「みやちゅう」。その一つが、職場体験・産学連携による人材育成に関する取り組みだ。
「岩沼市役所の生涯学習課に異動した知人から中学生の職場体験の受け入れ依頼があり、4名の中学生を受け入れることになりました。職場体験では、アプリ作成体験やパッケージデザインの制作など、ITやDXに関連した体験プログラムを提供しています。」
高校や大学との連携も進め、地域人材の育成に積極的に協力していて、これらの取り組みは会社の認知度向上にもつながっていて、採用状況も改善しているという。さらに、一般社団法人 日本デジタルトランスフォーメーション推進協会が選定する日本のDX推進を牽引するリーダー を発掘・支援する「JDX アンバサダー制度」において、初のアンバサダー認定者39名に畠山営業本部長が認定されるという快挙にもつながっている。「ずっと欲しいと思っていた第13回「富県宮城グランプリ」(DX部門賞) を受賞しました。こういう受賞は県内での認知度も高まりますし、会社の信頼度も高まっていくと考えます。」

ふるさと納税の返礼品事業など地域貢献活動にも参加し、地元農家との協力関係を築いている「みやちゅう」。地域の障害者雇用に積極的で、就労支援施設との連携や直接雇用を行い、ふるさと納税の返礼品の包装作業などを通じて地域貢献している。「いま、感じていることは地域内の企業間ネットワーク構築(コンソーシアム)の重要性です。地元の優れた企業を若い世代に知ってもらうための活動を行っています」と地域でのネットワークづくりに奔走する畠山正樹営業本部長。「みやぎ優れMONO」に認定された企業同士の横のつながりを通じて、異なる分野の企業との情報交換や協力関係が生まれているという。

「みやちゅう」のリーダーシップが地域の活性化にもつながっていくのではと感じた。この動きが若者の首都圏流出という課題解決にひとつの光明を与えてくれるかも知れない。

 

株式会社みやちゅう
宮城県岩沼市空港南5丁目3-4
HP:https://miya-chu.co.jp/

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